レポート

第2回 NEW CONFERENCE
女性経営者等の活躍に向けた会議~女性社長が動かす東京の未来~

分科会1:事業継承からのビジネス成長ノウハウ
ミッションは受け継ぎ、そこに強みをアドオンする

事業を継承する際、最初のハードルをどう越えたか。何を受け継ぎ、どこを変えてビジネスを成長させていくのか……。ファミリービジネスを継承した3人の女性経営者が自らの経験を惜しみなく語るこの分科会は、事業を継ぐ女性たちの問題解決へのヒントが満載でした。

「今日は、教科書で学べないことをぶっちゃけトークで(笑)」と、進行をつとめるOECD東京センター所長 村上由美子氏の言葉に促されるように、本音トークが始まりました。

家族から事業を継いだ際、まずどうやって社員からの信頼を築く努力をしたのか。

創業者の父親から、「ホテルの業績は会社が経験したことのない悪い状況」のときに事業継承したという、株式会社東横イン代表執行役社長の黒田麻衣子氏は、200店舗を超えるホテルの支配人一人ひとりとまず個人面談をし、「そこからおそらく心の絆ができてきたかなと思っています」。

母・中村紀子氏が1987年に設立した「働く女性を支援する」株式会社ポピンズの代表取締役社長の轟麻衣子氏。事業継承を決意したのちに入社した当初、新しい事業のスタートアップのために本社から離れて現場に常駐したことで、「私がちゃんと現場を大切にしているということが浸透し始めた頃、ようやく自分の居場所が見つかった」と言います。

「とにかく社員に挨拶。無視され続けても一方的にしつこく挨拶をしていたら、少しずつコミュニケーションができてきて信頼関係が構築されていった」と語るのは、日本電鍍工業株式会社代表取締役の伊藤麻美氏は、ラジオパーソナリティという異色の経歴の持ち主。「めっき業」という旧体質の業界で、社員はほとんど男性、平均年齢59歳という「ザ・工場」に飛び込んだ、伊藤氏ですが「アウェイ感覚は満載でした。失敗も成功も何がなんだかわからないまま、毎日突き進んだ」と20年前を振り返ります。

続いて村上氏は、事業継承に際し、先代の功績を活かしながら、また先代との関係を守りながら、ビジネスの何を残して何を経営者として変えたいかを問いかけます。

「人を守りたいので人員は削減しなかった。それまで供給分野が時計に特化していたが、そこにしがみつくのは止めて、医療・美容・健康などこれから伸びるであろう分野を増やしていった」と、既にお父様が他界されている伊藤氏。

轟氏は母である会長に物申すときは絶対に1対1で行うというルールを決めながら、「変えないものは、働く女性を支援するというミッションと最高水準の質にこだわるという2つ。そこに私が変えていけるものとして、IT化とグローバル化をアドオンしました」。

そして黒田氏は、先代と2人きりのミーティングを週1回行い、先代の想いを理解してきて、「これから何を継承して、何を変えていくのか、今まさに悩み始めているところです。継がせる気はないけれど、私の娘が働きたいと思える職場、私が娘を働かせたい職場にしたいという基準を大切にしていきたい、と打ち明けます。

さらに「女性」経営者であることのデメリット、アドバンテージについて。黒田氏は「専業主婦から突如仕事をすることになったとき、旦那は反対だったので、頼らないと決めました笑」「今はこれしか勤務できません」と社員には理解を求め、お迎えの後に夜、メールを返すなどしてやりくりしていました。「子育て・介護・教育という当社のサービスの領域は、女性が当事者意識を持って、女性の視点だからこそ気づくことが多い」、それが強みだと、轟氏は力を込めます。

つづく質疑応答では、会場から「サプライチェーンの中で、ご自身の事業をどんなふうに成功をさせていきたいのか」といったビジネスに関する質問から、「事業も家庭もやることがたくさん。日々の生活の中で何を優先させ、何を自分の中で大切にしてやっていったらいいのか」と、直面する切実な問題についてアドバイスを求める方も。

これに対し、「女性のキャリアはジャングルジム」とシェリル・サンドバーグ氏の言葉を紹介した轟氏は、「時には横に行ったり下に行ったりするけれど、また違う道で上がっていく。そうした多様な働き方やマルチタスキングのスキルなどは必ず経営に生きてくる」と、子どもをもつ女性経営者への温かい励ましを送ります。

さらに、「先代との世代間トラブルをどう解決するか」「どのように多角化を進めるべきか」など次々に投げかけられる質問に、3人のスピーカーそれぞれの経験に基づく示唆に富んだ答えが伝えられたところでクロージングとなりました。

村上 由美子
OECD東京センター所長

上智大学外国語学部卒、スタンフォード大学院修士課程(MA)、ハーバード大学院経営修士課程(MBA)修了。その後約20年にわたり主にニューヨークで投資銀行業務に就く。ゴールドマン・サックス及びクレディ・スイスのマネージング・ディレクターを経て、2013年にOECD東京センター所長に就任。OECDの日本およびアジア地域における活動の管理、責任者。政府、民間企業、研究機関及びメディアなどに対し、OECDの調査や研究、及び経済政策提言を行う。ビジネススクール入学前は国連開発計画や国連平和維持軍での職務経験も持つ。ハーバード・ビジネススクールの日本アドバイザリーボードメンバーを務めるほか、外務省、内閣府、経済産業省はじめ、政府の委員会で委員を歴任している。著書に「武器としての人口減社会」がある。

伊藤 麻美
日本電鍍工業株式会社 代表取締役

東京都出身。1990年 上智大学外国語学部比較文化学科卒業。約8年間のFMラジオ・TVなどのパーソナリティーを経て、1999年米国California州Carlsbadに留学、世界的に有名な宝石の学校 GIA にて鑑定士・鑑別士GGを取得。2000年日本電鍍工業株式会社 代表取締役に就任。2012年 日本アクセサリー株式会社 代表取締役社長、株式会社ジユリコ 代表取締役社長に就任、現在に至る。

轟 麻衣子
株式会社ポピンズ 代表取締役社長

母、中村紀子が1987年に設立した「働く女性を支援する」株式会社ポピンズに入社、2012年に取締役就任、2018年4月1日に代表取締役社長に就任。 経済同友会会員、経済産業省産業構造審議会2050経済社会構造部会委員。12歳からイギリスの全寮制私立学校に単身留学し、ロンドン大学King's Collegeに入学。1998年にMerrill Lynch Internationalのロンドン支店に勤務、2002年からCHANEL Corporation(パリ・東京)、2006年からGraff Diamonds Ltd. (ロンドン)、De Beers Diamond Jewellers Ltd. (ロンドン)に勤務。25年間の海外生活(英・仏・シンガポール)を経て、2012年に日本に帰国。INSEADのMBAの学位を取得。

黒田 麻衣子
株式会社東横イン 代表執行役社長

立教大学大学院で19世紀のドイツ史を専攻。2002年東横イン入社。出産・育児のため退社後、08年に副社長として復帰し、12年に社長就任。東横イン創業者である西田憲正氏の長女。東横インは1986年の創業以来、支配人には女性を登用。女性の感性を活かしたホテル運営をしてきた。前職は問わず、妻であり母である‘業界未経験の’30代後半~40代後半の女性を積極的に採用している。社長ヴィジョンとして「日本一女性が働きがいのある職場を目指して」を掲げている。

東横INNは2015年5月2日~3日に全店全室(日本243店舗と韓国6店舗で48,831室)を満室にしたとして、ギネス世界記録に認定された。日本国内285店舗、海外6カ国16店舗の合計301店舗で、総客室64,795室は国内最大級である(2019年8月末日現在)。

開催日時 令和元年11月30日(土)13:00~19:30
会場 品川プリンスホテル プリンスホール
東京都港区高輪4-10-30 品川プリンスホテル アネックスタワー5階
参加対象 企業・団体の代表者と経営層、個人事業主など(男女不問)

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