レポート

TOKYO女性経営者塾 by N E W
第5回 ソーシャルビジネスの成長戦略

日時 2021年1月21日(木)15:00~17:00
講師 株式会社テーブルクロス 最高経営責任者CEO
城宝 薫
進行 株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長、株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長
佐々木 かをり

社会に役立つ事業とは何か、改めて考えた1年。
ベンチャーらしく柔軟に、
新しい生活のビジネスモデルを構築する。

全5回でお届けしてきた「TOKYO女性経営者塾 by N E W」。最終回のテーマは、ソーシャルビジネスです。飲食店利用と途上国支援を結びつける仕組みをつくった(株)テーブルクロスCEOの城宝 薫さんを講師に迎え、社会に目を向けたアイデアを実現してきた道のり、新たな事業で更なるチャンスを見出している現在、そしてこれからの成長戦略を伺います。

資金調達で成長のアクセルを踏み、ビジネスパートナーと起業

「日常のアクティビティのなかで寄付が生まれ、世界中の人が幸せになっていく。このサービスを、誰かが立ち上げなければいけない」
そんな熱い想いを伝え続け、起業にこぎつけたという城宝さん。大学3年生で創業し、2021年で8期目。アプリの利用者が飲食店の予約をすると途上国の子どもに給食が届けられるという事業とともに、現在は世界各国に日本の食文化を発信する新たなビジネスも展開しています。

「最初は周りの方々から出資していただき、さらに、日本政策金融公庫、信用組合などから融資していただきました。追加で、ベンチャーキャピタルからも資金を調達しました。全く人脈がないところからスタートしたので大変でしたが、社会の課題解決を目指すためには成長のアクセルを踏みたい。だからこそ、ある程度の資金をもとにして、経験のある優秀な人財をヘッドハンティングしたいと思いました」

創業時、学生は城宝さんただ一人。10歳以上年上のビジネスパートナーと起業し、それから5名を採用しています。専門的な知識がなかったシステム開発はアウトソーシングし、契約店舗を集め、2015年にアプリケーションをリリースしました。

サービスをリリース、そして拡大フェーズの課題へ

開発当初から、アプリの仕様に多機能を求めていた城宝さん。途中で何度も変更を重ねたことで、リリースは1年遅れとなりました。「能力不足だった」と当時を反省しながらも、「本当にうれしくて、『これから頑張っていきます』という宣誓の意味も込め、100名ほどの皆さんを前に盛大なプレス発表会を開催しました」と振り返ります。

しかし、その時点で実際に予約ができる契約店舗数はわずか50件。リリース後は営業活動に重点を置き、店舗を拡大していきます。さらに、自身が発信するPR活動も強化します。
「直接話すことで、想いをより多くの人に知っていただくということを重視して、創業2年目から3年目にかけては年間200回くらい講演させていただきました。年間動員数は6,000人を超えていたと思います」

やがて共感するスタッフが集まり、3年目には社員数が40名に。同時に、資金内で人財や技術のレベルアップを目指すことの難しさも浮き彫りになってきました。城宝さんは当時の事業計画を「三流だった」と厳しい言葉で表現します。
「採用計画がうまくいかず、1年間でリリースできたサービスがひとつもないという結果になりました」

日本語にこだわらないグローバル展開が突破口に

どんな形にすれば技術力が担保でき、会社のキャッシュフローも安定するのか。そこで城宝さんは「日本語を捨てる」という大きな決断をします。

「採用を日本人に絞らずグローバルにすれば、母数が10倍になることに気付きました。私は帰国子女でもなく、留学経験もない。けれど、英語で話すのは好きでした。そこで募集要項の言語を日本語と英語にしたところ、応募数がアップ。最終的にジャマイカと中国の人財を採用し、システム開発の課題が解決しました」

さらに2018年、新たな路線を開拓。「byfood.com」というサイトを立ち上げ、インバウンド向けの動画コンテンツを通じて日本の食文化を発信していきます。
「地方に眠っている、本当によい食×体験を発掘するというのが私のミッション」と城宝さん。急成長を遂げたこの事業はコロナ禍で厳しい状況にはなったものの、海外からの注目度は下がることなく、動画の再生回数は伸び続けています。現在は世界各国に30名ほどのスタッフが在籍し、リモートワークによる業務を進行中。途上国の子どもを支援する当初の事業も成長し、28万食を突破しています。

社会に役立つ強みを見つけ、今をチャンスにする

セミナーの後半は、2つの会社の経営者である佐々木かをりさんが進行を務めるディスカッションです。(株)テーブルクロスが支援する国のひとつ「マラウイ共和国」について、佐々木さんが「ニュース番組のリポーターで行ったことがあります。難民キャンプなどを訪問しました」と話すと、「えー!珍しい!」と驚く城宝さん。意外なつながりから、話題が展開していきました。

参加者から今後の展望を問われた城宝さんは、「最初はインバウンドがいつ戻るのかを気にしていましたが、そうではなく、新しい生活に合ったモデルをつくっていくほうがベンチャーらしい、私らしいという考えに行きつきました」と答え、マーケティングデータを活用したビジネス展開などを解説。そして「改めて、社会の役に立つ事業は何だろう、自分たちの強みは何なのかを考えた1年でした。今は、チャレンジをするのに適した時期。女性起業家同士でぜひ一緒に頑張っていけたらと思います」と、一言。

「新しい時代の市場、商品、販売方法、人財など、すべてがグローバルになったということを確信した時間になりました」と佐々木さん。「私も通訳会社ユニカルインターナショナルが35年目、イー・ウーマンが21年目。時代の変化を楽しみながら、いっしょに前進しましょう」と参加者にメッセージを贈り、締めくくりました。

城宝 薫
株式会社テーブルクロス 最高経営責任者CEO

株式会社テーブルクロス最高経営責任者CEO。訪日旅行客向けグルメプラットフォーム「byFoood.com」と、飲食店検索メディア「テーブルクロス」を運営。予約が入ると世界中のこどもに寄付を届けSDGsを推進。EY主催WWN2018受賞。EO GSEAグローバルコンテスト日本代表、スイス最古のシンポジウム「St.Gallen Symposium」日本代表。経済産業省や内閣府をはじめ、企業・経済団体・大学・NPOなどでの講演多数を行う。

佐々木 かをり
株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長

大学卒業後に通訳や翻訳を提供するコンサルティング会社ユニカルインターナショナルを、2000年に「ダイバーシティ視点でイノベーションを起こす」をミッションにイー・ウーマンを起業。日本初のダイバーシティを数値化する「ダイバーシティインデックス」を発案するなど、ダイバーシティをテーマに国内外で数多くの講演をしている。内閣府規制改革会議を始め、経済産業省、総務省、厚生労働省、法務省、文部科学省など政府各省の審議会等で委員をつとめている。2018年には世界銀行主催の女性起業家を応援する組織We-Fiの日本代表チャンピオンに任命、さらに世界の2000名の女性経営者が所属する世界女性経営者組織(WPO)の日本支部代表に就任するなど、女性起業家・経営者をリーディングしている。

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