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セミナー

TOKYO女性経営者塾 by NEW
第4回 資金調達の方法の多様化 お金集めもクリエイティブに

日時 2024年2月15日(木)15:00〜17:00
講師 株式会社A&I 代表取締役
岡 美智子
進行 一般社団法人WE association 理事
株式会社A&CO 代表取締役社長
三竹 麻子

自分に合った資金調達の選び方とそのコツとは

「TOKYO女性経営者塾 by N E W」テーマ型セミナー、2023年度4回目のテーマは「資金調達の方法の多様化 お金集めもクリエイティブに」です。「エンジェル投資家倶楽部」という個人投資家と個人投資家からの支援を受けたい起業家のコミュニティを運営する、株式会社A&I 代表取締役 岡美智子さんに、資金調達の方法や考え方などについてお話しいただきました。

資金調達は本当に必要?まずは「目的地」を定めることから

まだ国内に20店舗ほどしかなかった頃に、スターバックスコーヒージャパンに入社した岡さん。そこで会社のストックオプションを取得したことから、株に興味を持ったと語ります。株式投資をしながら外資系の企業をわたり歩き、2020年2月に株式会社A&Iを設立しました。

「株式投資もそうですが、資金調達にも言えるのは『まずゴール(目的地)を見つけましょう』ということ。目的地がないまま始めても、道に迷ってしまうものです」

一見とっつきにくそうに思える資金調達というテーマですが、講義は例を交えながらわかりやすく進みます。目的地の話では、浅草にある標高10メートルほどの「待乳山(まつちやま)」と、日本が誇る世界遺産「富士山」が引き合いに出されました。

「待乳山は、みなさんの今日の服装でも行けそうな気がしませんか?でも富士山となると、そうはいきませんよね。ちゃんとした装備で、非常食も持っていかなくちゃいけない。これは、資金調達にも言えることなんです。低めの目標であれば、貯金が50万円ぐらいあればいけそうな気もする。でも高い目標、例えば1000万円かかるとすると、今の手持ちでは行けそうにないから、足りない分のお金をどうするか考えますよね」

事業の目的地を決めたら、次に大切なのは目的地への「行き方」だと語る岡さん。ここで例に出されたのは、「東京タワー」と「自由の女神像(アメリカ)」。それぞれ「どうやって行きますか?」と、参加者から案を募ります。
東京タワーには徒歩、車や電車、自転車などが挙がり、自由の女神像には飛行機や船が挙がりました。

「みなさんおっしゃるとおり、目的地によって手段の選択肢も変わるんです。資金調達の考え方の本質は、時間とお金です。自由の女神像へ行くとき、船やヒッチハイクでも行けないことはなさそうですが、とても時間がかかりますよね。でも飛行機に乗ればニューヨークまで10数時間。そこから自由の女神像となると、1日くらい見ておけば行けそうですよね。つまり、時間とお金をどう考えるか。融資を考えたほうがいいですか?と相談を受けた場合、私はまず『ご自身の目指す山に、いつまでにその山の頂上まで行きたいですか?』と聞きます。なぜかというと、1年で頂上まで行きたい人と10年後でいいという人では、答えが全く違うからです」

事業の目的地と行き方によって最適な資金調達の方法が変わることを踏まえたうえで、代表的な資金調達方法を8つに絞って解説していきます。
スモールビジネスとスタートアップの違いにも触れつつ、「スモールビジネスは融資がメイン。近くの目的地に自分で運転していくイメージです。一方で、スタートアップは出資がメイン。数千万や億単位で出資していただいて、飛行機で一気に目的地へ行くというイメージです」と語ります。

参加者のなかには、これから資金調達を考えるという方も少なくありませんでした。しかし、岡さんのわかりやすい講義で、資金調達の基本的な考え方をしっかり理解できたようです。

「融資」と「出資」で見方・見せ方が変わる

目的地と行き方を決めたうえで、融資・出資の選択に迷うこともあります。資金調達を成功させるための見せ方の違いとは、どのようなものなのでしょうか。

「融資と出資では、お金を出す側が見るポイントも、こちら側の見せ方も違います。融資は『この人は貸したお金を確実に返せるか?』という視点で見られます。出資は『この人に500万円出資したとして、その500万円が何倍になるか?』という見方をされます。お金の出し手の視点が違うんですね。もし投資家さんなどから出資を受けたいということであれば、自分のやろうとしていることがいかに世界を変えるか?市場規模が大きい?=どれだけ困っている人がいるか?などをピッチでアピールして、『未来にお金を出資してもらう』という見せ方を。金融機関などから融資を受けるときは、『着実にお金を返せる』ということを事業計画書等でしっかり見せること。ここが大きな違いになります」

事業計画書については、とにかく作って誰かに見てもらうことが大切という岡さん。
「事業計画書を作ってみて、金融機関、日本政策金融公庫などの創業融資でもどこでもいいので1回聞いてもらってみる。そうすると、例えば売上が足りない、固定費がかかりすぎでは?といったような指摘をもらえます」
自分の事業計画に何が足りていないのかのフィードバックをもとにブラッシュアップすることで、スムーズな資金調達への一歩が踏み出せそうです。

また、資金調達と関連して、会社を設立するには、合同会社と株式会社のどちらがいいかと相談されることも多いのだとか。
「合同会社のほうが安く設立しやすいというメリットはあります。ただ、投資家さんから出資を受けたい場合は株式会社でないとできないです。たまに合同会社の方から出資に関する相談を受けることもありますが、その場合は今後株式会社にする予定があるかなどを必ず確認しています」

質疑応答ではさらに深掘りが進み、参加者のみなさんの資金調達への関心の高さが伺えました。

「借りられるときに借りる」ことで信用を積み重ねるという手も

参加者のみなさんの心に強く残ったと思われるのが、岡さんも進行の三竹さんも口を揃えた「お金は借りられるときに借りておく」という言葉。

「今まで融資を受けてこられなかった方は、コロナ禍のときになかなか銀行から借りられなかったというお話があるんです。もちろんお金を借りるのが怖いという方も、利息がもったいないという方もいらっしゃるかと思いますが、例えば500万円を借りて、毎月2~3万円でもいいので長期で安定的に返していくと信用がつきますよね。そのほうがメリットが大きかったりするんです。私の知り合いの経営者の方も、借りられるときに借りておけと言っていますね」

「自分も借りられるときに借りています」という三竹さん。融資を受ける際に自分の会社はもちろん取引先も見られるとのことで、大きい企業の取引先をつくるのも融資を受けるコツだと語ります。

もちろん、融資や出資だけでなく、自分でお金を稼ぐというのも資金調達のひとつ。
「資金調達の方法に、正解・不正解はないんです。例えば小売業であれば、クラウドファンディングにテスト販売のようなかたちで出してみて、それでお金が入れば、それはいわば広告宣伝費や制作費として考えられますよね。人からお金を借りなくてもそこで回せるようになるというケースもあると思います。車を例にすると、融資を受ければガソリン満タンで余裕を持って走れるようなイメージ。融資を受けない場合は、3分の1くらいのガソリンの残量で売上を気にしつつ走り続けているようなイメージ。どちらを取るかは、会社それぞれだと思います」

お金を借りることも、借りずに自分の事業で稼いで回すことも、どちらも資金調達の方法。資金調達とひとくちに言っても実にさまざまな選択肢があることがわかり、積極的にメモを取るなど、参加者のみなさんも役立つ知識を持ち帰れたようです。

5年後、20年後の「目的地」を決め、資金調達を考えよう

セミナーの最後は、講師を交えてのネットワーキング。自己紹介のあと、5年後にどうなっていたいかという話題で盛り上がります。参加者の全員が5年後も現役で走り続けるという回答でした。

「なるほど、それだと売り抜けるといった発想がまだないかもしれませんね。ただ、例えば20年後にどうなっていたいかというビジョンがあると、ブレイクダウンしやすいのかなと思います。よく例えで起業家の方にお話するんですが、『走れ』って言われるのと『グラウンドを3周走れ』って言われるのだとどちらがいいですかと聞くと、みなさん絶対3周のほうって言うんですよ。なぜかというと、ゴールがあるから全力疾走できるんですよね。例えば5年後に会社を売却としますと言って、実際には売却できなかったとしても、それを目指す過程は無駄ではないですし、違う景色も見えると思います。この機会に5年後、そして20年後のことを考えてみてもいいのかなと思います」

何年後に自分の目指す目的地にたどり着きたいかを明確にすることが、資金調達の面、ひいては事業全体として重要なポイントになるということを再確認し、セミナーは盛況のうちに終了しました。

岡 美智子
株式会社A&I 代表取締役

石川県出身。立命館大学卒業。
在学中に UBC(ブリティッシュコロンビア大学、カナダ)に留学。 卒業後は、スターバックスコーヒージャパンに入社、新店舗立ち上げ、人材育成等を経験後、P&G、アストラゼネカ、医療機器メーカー、薬事コンサルと外資系企業で経営企画、マーケティングに携わる。
スターバックスコーヒージャパンでストックオプションを得たことがきっかけで始めた株取引の趣味が高じて、独立後に株スクールの講師を務めたのち、2020年2月株式会社A&Iを創業。
「エンジェル投資家の存在が当たり前の社会に」を掲げ、起業家やベンチャーの志を投資家に繋ぐコミュニティを運営。
iU(情報経営イノベーション専門職大学)客員教授

三竹 麻子
一般社団法人WE association 理事​
株式会社A&CO代表取締役社長

KDDI、マイクロソフト、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て独立、株式会社A&COを創業。
社会人大学院の女性キャリア支援からスタートし、キャリアコーチサービス「Good Coach」を運営。企業の女性管理職育成や男性管理職のマインドセットにコーチングで成果をあげてきた。
2023年業界専門紙数社と一般社団法人WE associationを設立、DE&Iに関する企業支援の幅を広げている。

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