ATTO 青山今子社長インタビュー

「コロナ禍でも6人の社員を増やしました」と話された第1回東京女性経営者アワード[持続経営部門]受賞のATTO株式会社 代表取締役 青山今子さんの会社で取材させていただきました。

東京女性経営者アワード
持続経営部門受賞

大手競合にも負けない強みで継続成長。10年後売上100億を目指す!
ATTO株式会社 代表取締役 
青山今子さん

2021.01.22

中国出身。北京での公務員の仕事を辞めて日本の大学に留学し、その後起業。化学品業界に飛び込み、自社の強みを発揮して平均成長率20%以上で継続成長を続けるATTO株式会社 代表取締役 青山今子さん。競合他社と自社をどのように差別化し、強みを発揮し、ビジネスを拡大してきたのか。起業から成功へのストーリーを伺いました。

起業して化学品業界に飛び込んだのは一瞬の判断

1995年、北京での公務員の仕事を辞めて日本の大学に留学したときから、「38歳までには起業する」という目標がありました。公務員の安定を抜け出して経済の世界で勝負しようと。大学卒業後はNTTコミュニケーションズに勤務しましたが、第一子の妊娠をきっかけに起業を決意。2006年、39歳での起業でした。

創業当時の業務内容はIT人材派遣業でしたが、リーマンショックが起きて人材派遣業が難しくなり、半年間さまよった結果、2009年に化学品業界に飛び込みました。
なぜ化学品の専門商社を選んだのか。化粧品の原料や雑貨を扱おうかと思った瞬間もありましたが、ある時ふと、以前に中国メーカーとの翻訳・通訳をしたのが医薬品中間体の仕事だったことを思い出し、ケミカル業界も面白そうだと思ったのがきっかけです。

化学品原料といってもイメージしにくいかもしれませんが、携帯電話の部品、半導体や電子材料にも使われており、また、医薬品、化粧品、農薬などの原料や、天然物から抽出したエキス、パウダーなども化学品原料です。私たちの日常生活は、実は化学品から離れられないのです。

あの時、化学品を選んだのは一瞬の判断だったと思います。瞬間瞬間の判断で次のステップが決まる、そういうことの多い人生を歩んできました。

創業当時は中国人女性であることが不利に

最初はお客様に毎日メールしても無視される、振り向いてもらえないことばかりでした。一人で営業に行くと、相手は技術者で博士号をもっている方ばかり6、7人並んで、それぞれの専門以外は一言も話さず、私も何を話していいかわかりませんでした。

しかも、一通り話せるとは言え、日本語は細かいニュアンスが難しいので、そんなつもりはないのに「上から目線」と思われてしまうこともありました。また、「忖度のできない中国人女性が自分たちの意に沿ってやってくれるのか」、「何かトラブルが起きたら中国人女性に解決できるのか」と疑いの目を向けられることも・・・。悔しさで眠れなかった夜は数え切れません。

眠れぬ想いをし、何度訪問しても断られプライドが崩れても、時にはちょっと興味を示してくれるお客様もありました。たとえそれが100グラムの化学品原料の注文で、微々たるものであっても、私は中国のメーカーがつくる進捗状況を毎週必ずお客様に報告し、それがとても喜ばれました。相手の立場で物事を考え、相手のニーズに対して自分ができることは何かを考え抜いてサービスを提供すれば、お客様は認めてくれます。そうやって少しずつ手応えを感じるようになりました。

自社の強みを打ち出し、大手競合にも勝つ!

ビジネスとして成り立つようになったのは、競合となる大手や中堅の商社に対する徹底的な「差別化」を行い、ATTOの「強み」を前面に打ち出したからです。

ATTOの強みとは、ずばり、スピードとコミュニケーションです。日中韓英の言語や文化に精通しているので、直接、海外メーカーとの意思疎通が図れ、結果としてお客様を待たせないスピーディな対応ができます。

コミュニケーションについては、ビジネスといっても結局は「人」ですから、人と人のコミュニケーションが全てだと私は思います。特に異なる文化の人と人の場合は、両方を理解した上で橋渡しするコミュニケーションが重要です。ですから、きめ細かさや配慮に富んだサービスなど日本の優れた点を、文化の異なる中国のメーカーに理解してもらうために、私は相手が納得してくれるまでとことん話します。「日本のお客様は非常にきめ細かい。でもいったん信用を得ると長いお付き合いをする文化。中国人が日本で爆買いするのは日本の品質が良いからでしょ」と言うと納得してもらえるんです。

さらに、お客様のニーズに沿う価格と、詳細な情報提供もATTOの強みといえます。例えば、大手商社が取り扱っているのと同じ医薬品中間体でも、ATTOは利益を気にしないので驚くほど安い価格で出せます。しかも、大手商社が出さないような詳細なメーカー情報、すなわち、工場が化学工場団地内にあるとか、ISOを取得しているとか、化合物をどれくらいの製造キャパでどの国に販売しているかなどを調査して提出するので、お客様に喜ばれます。

現在は中国のメーカー400社以上とお付き合いがあります。これまで、延べ40万件以上の化学品を日本の大手製薬、化学系企業に供給してきました。昨今では中国のケミカル業界でもATTOの噂が広まっているようです。日本国内の医薬品メーカーからも高い評価をいただき、お客様が別のお客様を紹介してくれます。築いてきた信頼の証だと思います。それで今はすごく仕事がしやすくなりました。

人財に投資し、不安も現実に切り替えて、ビジネスを拡大

お客様に満足していただけるきめ細かいサービスを徹底的に行うためには、労力もかかります。他社が3人でやることをATTOは4.5人でやるので固定費もかかる。そして人財も必要となります。

人財を集めるために、正直言ってかなり投資しました。募集してもなかなか人が来ないので、2014年から人材紹介会社に30%の紹介料を払って、内勤の女性を含む多くの社員を採用しました。「身の丈を知らない」と批判もされましたが、正解だったと思います。人財がなければお客様が増やせないし、ビジネスの拡大ができません。特にATTOの場合は技術営業の強化が必要です。だからこその投資と考え、現在も続けています。

また、上海と重慶にある中国支社には現在12名の社員がおり、その90%は大学で「有機合成」を専攻した人たちです。独自の人脈と知識を活かして、中国市場調査でも他社に負けない実力を発揮しています。採用は、中国でも日本と同時進行し、日本サイドで増えてくる業務を中国側でもスピーディに対応できる態勢を整えています。

おかげさまで順調に業績は伸び、2017年に設けた3カ年計画の売上20億を2020年2月で達成できました。2020年3月からは15期目がスタート。3カ年中期計画を改めて策定し、2020年度24億、2021年度27億、2022年度30億という目標を設定したところで新型コロナ…。もちろん不安もありますが、不安を現実に切り替えて、次に何をすべきか、どう行動すべきか、毎日頭の中に絵を描きながらやっています。

そして、2020年度は27億達成できそうなので、さらに人財を集めることにしました。こういう時だからこそ優秀な人財がハローワークに集まると思って再登録し、6人中途採用しました。それでオフィスが手狭になったので年末に引っ越しをし、中央通りに面した新しいオフィスで2021年をスタートします。

目指すは、10年後に売上100億。日本橋に自社ビルです。

経営者に必要なのは「覚悟」と「計画」

やるからにはとことんやる性格です。売上目標も50億で終わるのは中途半端な気がして10年後に100億を目指すと言っています。実際、やればやるほど結果がついてくるので、その喜びは私だけしか知りません。眠れぬ夜もあったからこその喜び、達成感は言葉で表現できないほど。それが私の生きがいです。

日本に来て26年目になりますが、一度も桜を見に行ったことがないんです。週末も会社に来て仕事をしていましたし、みんなで花見をしたことがありません。みんなが遊んでいても自分は仕事をする、そのぐらいの覚悟がないと社員を雇って会社を成長させていくことは難しいのではないでしょうか。「覚悟」と「計画」が経営者の基本だと、私は思っています。

青山 今子
ATTO株式会社 代表取締役

2006年にATTO(エイティーティーオー)を設立。2008年から化学品の専門商社となり、平均成長率20%以上で成長。現在、400社以上の中国サプライヤーから、延べ40万件以上の化学品を日本の大手製薬、化学系企業に供給し、既に3つの新薬の上市に貢献されています。

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