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「自分はどうしたいのか」という問いから逆算 一つ一つの過程を“自分のやり方”でやりきる
森トラスト株式会社 代表取締役社長 伊達美和子さん

2019.12.27

森グループの創業者一族として生まれ、幼い時から父の背中を見ながら自然と「不動産の仕事がしたい」と思うようになったという伊達美和子さん。大学まで女子校で育ち、卒業後は自分の意志で大学院に入学、都市計画や建築について専門的に学んだ。その後、経営者としては一般的な世の中の仕組みを受け止めながらも「自分のやり方」を貫き、一つ一つのプロジェクトを成功させてきた。その経営方法の根本にある考え方とはどのようなものなのだろうか。

大切なのは目的を持って行動すること

――学生時代はどのように過ごされましたか。

ずっと女子校に通って育ちましたが、家庭では男女の性差なく育てられたと思います。学校では、女性だけで活動するがゆえにリーダーシップといったものを身に付ける機会に恵まれました。女子校は女性らしい教育を受けていると思われているかもしれませんが、むしろ性別を意識しない環境で、自主性、自立性を重んじる自由な教育方針の学校でした。「〜しなければいけない」という義務はありませんでしたが、目的をもって行動しなければ自分を磨き上げることはできないと教えられました。

――そうした教育は現在、経営者としてのご自身にどのように役立っていますか。

自分で考えて行動することの大切さを学んだように思います。知識は学び取ればいいし、暗記もテクニカルなことです。そういったものは手法として取り入れればいいですが、あくまでそこで得たデータから自分なりの考えを出して行動することが大切です。知識だけあっても、考える力がなければ知識は活用できません。数学のような勉強には答えがありますが、社会では答えのないことを考えて提案することが求められます。「机上の空論」だけでは何もできないわけで、実行しなければ検証すらできない。また、実行すれば企画したものが必ずしも実行できるものばかりではないことにも気づく。そこでさらに考えて改善し続けていくことが必要です。考える力、企画する力、実行する力。この三つが揃わなければ最終的には事業やプロジェクトは成り立たない。そのために情報や知識は自ら取りにいくものなんですよね。

「やはり私は不動産の仕事がしたい」

――経営者というものを意識されたのはいつ頃ですか。

私は受験を経験しませんでしたので、比較的自由な時間がありました。その分、「自分を成長させるために何をすべきか」ということを考え始めたのが高校生の頃です。そんな時にたまたまビジネス書を読んでみたら面白かったという記憶があります。経営者やある分野の専門家が多い一族の中で育ち、様々なことを見聞きしながら成長するなかで、幼い頃から「自分も何かをしなければいけない」ということは意識していました。それが何であるかはなかなかわかりませんでしたが、小学生くらいの時に父が起業したホテル事業についての話を非常に面白く感じて興味を持つようになり、将来はそういうものを手伝えたらいいなと漠然と思うようになりました。でもただ父と一緒にビジネスをやりたいと言っても申し訳ないと思い、「ビジネスって何だろう?」と読み始めたのがビジネス書でした。実際に読んでみると、いろいろなことがクリティカルに書いてあるので刺激を受けました。

――大学卒業後の進路はどのように考えられていたのでしょうか。

大学入学時に「仕事をするか、家庭に入るかという人生の選択肢がある」と言われて初めて、「女性はそういう選択をする時期が来るんだな」と思いました。そこで「やはり私は不動産の仕事がしたい」と考え、文学部にいた私はそこから仕事をしていく上で専門の勉強をしなくてはならないと気づき、都市計画や建築について学べる大学院を目指す決意をしました。

大学院修了後はコンサルタントの仕事を選びました。そこで、組織が選択する行動に対して社員はどう思うかということも実感として学びましたし、先輩から指導を受けながらレポートを書いたり、取引先の企業に関する様々な事実を調査して考え方を提示したりという貴重な経験ができたことは非常にありがたかったと思っています。

――お父様から学んだことはどんなことでしたか。

2011年に森観光トラスト(現・森トラスト・ホテルズ&リゾーツ)の社長に就任してからは、1つの会社の経営においては、「社長かそうではないかで責任は全然違うのだからしっかりとやりなさい」という形で言われてきました。責任のある立場についてからも、父から程よいタイミングでタスクを与えられ、私もそれを活用しながら、その時の自分の余力に応じてできる範囲を拡大しながら次のことを考えることができました。

ロールモデルを求めたことはない

――不動産業界には女性経営者は少ないですが、不安などはありませんでしたか。

この業界だけではなくあらゆる業種で女性のトップの比率は少ないため、私はずっと気にしていません。ロールモデルが必要かというと、必ずしもそうではないと考えています。私はいろいろな経営のパターンを参考にはしますけれど、誰かを完全にコピーすることはしません。男性でも女性でも外国人でも若い人でも年配の方でも、それぞれ個性としていろいろな手法をお持ちですので、その部分を参考にはします。でも自分はどうするかは自分の問題なのでロールモデルを求めたことはないです。

もしかしたら、ロールモデルがいなかったために全てにおいてゼロから見ることができたのがかえって良かったのではと感じています。ホテルでもオフィスでも、「一応世の中はこうしているらしい」ということを「そうか」と受け止め、「自分はどうしたいのか」「そのためには何をしなくてはいけないか」という逆算をして、一つ一つを解決していくということをやってきました。なおかつ「自分が目指したい世界観をつくりたい」という風に作業の過程を組み立てていくので、最近ではデザイン志向と言われる考え方を実践できたことが私の強みになったのかもしれないと思っています。

――そこは女性ならではの視点と言えますね。

もしかして自分が男性経営者だったら社会の今までの流れを気にしていたかもしれないですね。反対に女性だったので、何をやっても目立ってしまい、必ず何か言われる。それならば、自分のやり方でやりきることの方がいいだろうと思いました。ただし、いきなり高い目標を持つのではなく、一つ一つ自分がやりたいことを、時間をかけて成功体験を重ねていくことで周りが認めてくれると信じながらやっていましたし、その延長線上に現在があると思っています。

伊達 美和子
森トラスト株式会社 代表取締役社長

慶應義塾大学大学院修了後、総合コンサルティング会社勤務を経て、1998年に森トラスト株式会社入社。2016年6月に当社代表取締役社長に就任。多数の都心部での大型不動産開発を統括する傍ら、ホテル&リゾート事業では、昨今のインバウンドブームに先がけて、コンラッド東京、シャングリ・ラホテル東京、翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都をはじめとしたインターナショナルラグジュアリーブランドの誘致をいち早く主導しており、2020年には東京エディション虎ノ門、JWマリオット・ホテル奈良を新たにオープンさせる。そのほか、『Create the Future』のコーポレートスローガンの下、イノベーション創出を目指して、スタートアップ企業への出資や海外投資なども精力的に推進させる。

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