女性として経験したこと、感じたことを経営する上でのベンチマークに
株式会社アイスタイル 取締役(共同創業者)/ 株式会社ISパートナーズ 代表取締役 山田メユミさん

2019.08.23

1999年の創業から今年20周年を迎えた株式会社アイスタイルは、国内最大規模に成長したコスメと美容の総合サイト「@cosme(アットコスメ)」の運営を中心とし、日本のみならずアジアの女性をターゲットに豊かなライフスタイルを提案する。立ち上げにあたって中心となったのが、共同創業者の山田メユミさんだ。長く愛される企業とサービスを維持するためにどのような経営を心がけてきたのだろうか。

化粧品に関する生の声を届けたいという使命感からスタート

――「@cosme」は口コミサービスの先駆けといえます。参考にできるビジネスモデルが無い中で、どのようにサービスを誕生させたのですか。

インターネットが私たちの生活に浸透し始めた1990年代後半、化粧品メーカーに勤めていた私もその可能性を感じ、ボーナスをはたいてパソコンを購入しました。そんななか友人から背中を押され、仕事を通して得た知識を活かして、化粧品の口コミ情報をメールマガジンで発信していました。完全に趣味で始めたのですが、自分で購入して試した化粧品について利害関係なく、ありのままに発信するうちに、思いがけず読者の方からも「これもいいのでぜひ使ってください」とか「試してみたらとても良かったです」といった熱量の高いお返事をたくさんいただくようになりました。そこで商業ベースではない「生の声」が女性の間で求められていると確信するようになりました。同時に、「世の女性のリアルな声を私だけの手元に留めておいちゃいけない!」と勝手ですが(笑)、使命感を抱くようになり、誰もがフラットに質問したり、情報を共有したりできるオープンな場所をインターネット上につくりたいと考えました。そして、「みんなでつくる、みんなのためのコスメガイド」として1999年に仲間と起業してスタートしたのが@cosmeです。

――会社に勤めながら起業の準備を行ったそうですが、具体的にどう進めたのでしょうか。

サービスの立ち上げにあたっては、当時1000人を超えるメルマガ読者の皆さんが協力してくれました。なかでも主婦やOL、学生といった様々な立場の女性が10名ほどボランティアで集い、初代編集部員として、商品データの収集、口コミのサンプルの投稿などを担当してくれました。そうやってつくりあげたウェブサイトを、読者の皆さんにクローズで公開して試用いただき、感想や意見を参考にしながら改良を重ねた後、晴れて一般公開してみると、インターネットの普及に比例するように利用者が増えていき、世の中の女性はこうしたリアルな商品情報を欲しているという確かな手ごたえを感じました。

チームのメンバーが個の強みを生かし、新たなマーケットのニーズを創出

――趣味からビジネスへとアイデアを移行されたわけですが、事業計画やマネタイズについてはどのようにお考えでしたか。

@cosmeの立ち上げに際し、ユーザーから集まる口コミ情報は、他のユーザーだけではなく、企業にとっても有益な情報になると考えていました。化粧品業界でリサーチなどの仕事をしてきた経験から、各企業が集められる情報は自社の顧客情報のみで、他社との比較データの収集は難しいことが分かっていました。また、モニター調査などで質問用紙に記入された回答と、メルマガに寄せられる声には「リアルさ」という意味で大きなギャップがあると私自身が肌で感じていたからです。そこで、インターネット上にデータベースを構築して、利害関係のないリアルな声を集めることができれば、必ず企業にとって価値の高い消費者データベースになるという確信があり、ビジネスとしての可能性も秘めていると予測していました。

――具体的にはどのようなメンバーで事業を立ち上げたのでしょうか。また、ビジネスは順調に推移していったのでしょうか。

三人が中心となって事業を進めていました。一人は現在、株式会社アイスタイルの代表取締役社長兼CEOの吉松徹郎です。彼はコンサルタント出身のため、インターネット黎明期の様々な事業を分析し、ビジネスモデルを精査。私はサイト設計に加え、対ユーザーに向けたサービス企画を担い、もう一人システムエンジニアがそれを具現化してくれました。このように、三人が三様の強みを生かしました。

事業計画をつくるにあたり、この規模になったらメディア事業を、この規模になったらEC事業を、この規模になったら店頭支援事業を、という見通しを立てていたため、一期目は営業活動を行いませんでした。そうやって静観していたらネットバブルがはじけて、計画していた出資が見送られ、そこから数カ月間はいつ潰れてもおかしくない、という状況に。2000年8月に大口の出資をたまたま受けることができ、なんとか首の皮一枚で繋がった感じでした。

そののちの営業面でも苦労しました。当初はメディアとして認識してもらえず、広告出稿はおろか、無償での情報掲載すらも許されません。それでも、インターネットの可能性やサービスのユニークさに目を付けてくださったメーカーの担当者の方々が社内を説得してくださり、企業との取引を始めることができ、そこから、ユーザー参加型の商品開発など企業との共創が始まりました。

社会の価値に寄り添い、努力と工夫を重ねることで企業は継続する

――創業以来、着実にビジネスを成長させながら今年20周年を迎えられました。サステナブルな経営という視点で、今後をどのように捉えていますか。

私自身が出産し、仕事と子育ての両立の難しさを経験したことで、働き方について真剣に考えるようになりました。また、少子化の中で、サステナブルな経営をしていくには、これまでの運営体制を見直さなければ、上質なサービス提供が難しいという危機感を抱くように。そこで立ち上げたのが、株式会社ISパートナーズです。長期的にワークライフバランスを整えながら活躍できるチームをつくるにはどうしたらいいかを考えた際、自らの経験からも、職住近接じゃないと仕事と子育ての両立は難しいという結論に達し、女性の活躍を支援する取り組みを行っている千葉県流山市にサテライトオフィスを開き「美容×IT」に特化したスペシャリスト集団を形成し、高品質なコンテンツをチームでつくる体制を整えました。新潟の十日町にも新たなチームができ、朝の5時から夜の10時までのワークタイムに自分の時間の都合にあわせてフレキシブルに働ける環境を提供しています。

いま会社としては約1500人の従業員を抱えるまでになったため、すぐに全社的に何か仕組みを変えるのはなかなか難しい状況になっています。しかし、ここで上手くいったものを本社に組み込むことで、全社的により働きやすい環境をつくって行ければと考えています。

――今後の展望についてはどのように考えていらっしゃいますか。また企業を存続していくために大切なことは何でしょうか。

会社としては、生活者中心の市場の創造というビジョンを掲げて来ましたが、いまだに毎年、毎年ようやくスタートラインに立ったという心境になります。創業以来、@cosmeを通じて、化粧品というプロダクトと人を繋いできましたが、今後は人(生活者)と人(美容のプロ・スペシャリスト)、人とサービスといったように、人とプロダクト以外の領域に力を入れていきたいと思っています。それに加え、海外展開も重要視しています。これだけ社会が国際化し、人やモノの行き来があるわけですから、国内のマーケティングデータに、海外のそれをつなげることで、新たな価値が生まれると思います。

こうした事業の一つひとつに対し、社会が価値を見出していただければ、それが収益に繋がります。企業の存続はその連続の上になりたつため、これからも社会的に価値あるサービスを提供していけるよう、努力をして積み重ねて行くしかないと思っています。

山田 メユミ
株式会社アイスタイル 取締役
(共同創業者)、
株式会社ISパートナーズ 代表取締役

1995年東京理科大学基礎工学部生物工学科卒。化粧品メーカー在職中、個人の趣味で始めたメルマガへの反響をもとに、コスメ情報サイト『@cosme』を企画立案。サイト立ち上げに参画し、1999年(株)アイスタイルを共同創業。現在も同社取締役を務めるほか、2016年には未就業女性のスキルアップおよび就業支援を目的とした(株)ISパートナーズを立ち上げ、代表取締役を兼任。また、経済産業省・産業構造審議会消費経済部会基本問題小委員会委員、総務省・情報通信審議会委員、内閣官房・知的財産戦略本部有識者本部員等も歴任。「Forbes JAPAN」が主催する『Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2017』において、個人部門で「グランプリ」を受賞。

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