レポート

第4回 NEW CONFERENCE
女性経営者等の活躍に向けた会議 ~女性社長が動かす東京の未来~

分科会3:事業継承。社長を引き継いで成長させる
専業主婦の経験も、ビジネスに活きる。
会社を引き継ぎ、成長させてきた想いとは

事業を継いだ2人の女性社長とともに語り合うセッション。ファシリテーターは、日本初のESG重視型グローバル・ベンチャーキャピタルファンドであるMPower Partners Fund L.P. ゼネラル・パートナーの村上由美子氏です。「舞台に出てこない話も含めながら、あれこれ聞かせていただこうと思います!」と、さっそく議論がスタートしました。

1940年創業の老舗企業、株式会社ナガオカの代表取締役社長である長岡香江氏は、4代目の経営者となって7年目を迎えています。
「専業主婦をしていましたが、2014年に家族の急逝により、引継ぎゼロで経営者となりました。レコード針の生産では世界シェア90%で、ナガオカが供給しないとレコードを聴く針先が無くなると聞き、ミッションとして引き継いでいこうと思いました。一時は経営が傾いていましたが、現在は多角化に成功しています」

2012年に東横インの代表執行役社長となった黒田麻衣子氏も、専業主婦からの就任でした。
「創業者の長女ではありましたけれども、ある意味、女だからというところもあり、仕事は父のもの、会社は父のものという意識で育ってきたかなと思っています。しかし、父が役職から降りることになり、私が会社を守らなければと勝手に思って、やらせてくださいと申し出ました」

「面白いですね。お二方とも専業主婦でいらして」と、村上氏。「実は私の母親も専業主婦で、48歳でドラッグストアを立ち上げて成功させました。専業主婦の視点があったからこそ、ビジネス展開がうまくいったということがすごくあるんですね」という言葉に、黒田氏も「各ホテルの支配人が95%以上女性で、支配人たちの気持ちが分かる経営者になれているんじゃないかなと自負しております」、長岡氏も「社員の7割が女性なので、そこでリーダーシップを発揮するには、専業主婦だったときの気配りなどがすごく大事だと思います」とうなずきます。

続いて、「事業継承するにあたって変えたことは?」という村上氏の問いに、長岡氏が就任当時を振り返ります。
「レコード針の製造技術を活かした多角化で成功し、部品の製造分野はそこそこうまくいっていました。しかし、レコード業界向けのオーディオアクセサリーやイヤホンは完全な赤字。営業部長に聞くと、『新製品が何年も出ていないので、戦えない』と。そこで、翌月に香港などの協力工場へ行き、数か月に1回、新製品を出すように心がけませんかと呼びかけました。今はスピードアップしてきて、社員からアイデアも出てきて、好循環になってきています」

続いて黒田氏は、「私はこの会社があって生活できたし、大人になれたという想いがあって、たぶんそこが原点なんですね」と語ります。
「父はカリスマ経営者だったので『俺についてこい』という人でしたが、私は皆さんに感謝して、一緒にやっていきたいという気持ちがすごくありました。ですので、長岡さんがおっしゃったように、社員の中から『こんなことをやりたい』と言っていただけるような、社員が自己実現をできるような会社に変わっていかなきゃいけないと思っています」

さらに、話題はコロナ危機の対策、ネットワーク作りまで広がっていきました。後半は参加者もディスカッションに参加。「ベテラン社員が、自分と向いている方向が違う時、どういうマインドセットをされましたか?」「会社を継ぐ時、夫の協力は?」「悩んだり落ち込んだりしたときの気分転換は?」などの質問が飛び交い、三人三様のスピーカーの経験が大いに語られる、賑やかな時間となりました。

最後の締めくくりに、参加者に向けてメッセージが贈られます。長岡氏は、「私からは、『走りながら考えよう』です。いろいろ考えすぎるとスタートできないので、とりあえず見切り発車で、走りながら考える。やってみたら案外うまくいったり、サポートがあったりするものです」。黒田氏からは「自分の功績を残そうと思って無理に会社を変えようとすると、それまで会社を守ってくれた方たちが否定されたような気分になるでしょうし、自分も焦ってしまう。自然に変えたいと思う時が来るまで、そのままでいいんじゃないかなと思ってます」と、実体験からくる言葉を語ってくださいました。

「今回のセッションをご覧になって、これからも多くの方々が事業を継いで、どんどんビジネスを成功させ、日本の経済を成長させる、そんな新しい日本の明日が見えてくるといいなというふうに思っております」と村上氏。リズミカルな進行のなかで次々と思いがあふれる、熱いセッションとなりました。

黒田 麻衣子
株式会社東横イン 代表執行役社長

立教大学大学院で19世紀のドイツ史を専攻。2002年東横イン入社。出産・育児のため退社後、08年に副社長として復帰し、12年に社長就任。東横イン創業者である西田憲正氏の長女。
東横インは1986年の創業以来、支配人に女性を多数登用し、女性ならではの感性を活かしたホテル運営を行ってきた。前職を問わず、業界未経験の30代後半~40代後半の女性を積極的に採用。社長ヴィジョンとして「日本一女性が働きがいのある職場」を目指している。
2016年 Forbes Japan「JAPAN WOMAN AWARD 2016」にて『リーダー輩出部門 グランプリ』受賞
2018年 エイボン・プロダクツ株式会社(当時)「エイボン女性年度賞2017」にて『教育賞』受賞
2020年 毎日新聞社主催『第40回毎日経済人賞』受賞

村上 由美子
MPower Partners Fund L.P.
ゼネラル・パートナー

MPower Partners ゼネラル・パートナー、OECD(経済協力開発機構)東京センター元所⻑。内閣府、経産省、外務省など多くの審議会で委員を歴任。2016年に上梓した『武器としての人口減社会』はアマゾン経済書部門にてベストセラーとなる。OECD以前は、主にニューヨークおよびロンドンのゴールドマン・サックス証券会社のマネージメント・ディレクターとして約20年間勤務。カンボジアの国連平和維持軍や、東カリブ海地域の経済開発援助にも携わった。上智大学、スタンフォード大学院、ハーバード大学院卒。

長岡 香江
株式会社ナガオカ 代表取締役社長

慶應義塾大学卒、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修了後、外資系金融機関に勤務。
2014年ナガオカ取締役。2015年ナガオカトレーディングの代表取締役に就任、2016年ナガオカ及びナガオカ精密の代表取締役に就任。
東大エグゼクティブマネジメントプログラム修了生。
ダイヤモンドレコード針の世界ナンバーワンブランドとして生産量トップシェアを誇るナガオカを事業承継、難削材の精密加工部品製造など多角化を推進する一方で、新ブランド「MOVIO」「LUSVY」を立ち上げ、ドライブレコーダー、ワイヤレスイヤホン、美容製品などを展開。アナログレコード文化を支える活動に取り組んでいる。
2018年 日本オーディオ協会「音の匠賞」受賞
2020年 創業80周年記念レコードカートリッジ「JEWELTONE JT-80」発売。「グッドデザイン賞2020」「JAZZ JAPAN AWARD 2020 ベスト・オーディオ機器賞」受賞 海外でも高評価を受ける。
2020年度ダイヤモンド経営者倶楽部「特別賞」受賞

開催日時 2021年11月1日(月)13:15-18:30
会場 オンライン開催(ZoomとYouTubeによるライブ配信)
参加対象 企業・団体の代表者、経営者層、個人事業主など(男女不問)

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