レポート

TOKYO女性経営者塾 by N E W
第3回 出資したくなるビジネスプレゼンテーション

日時 2020年10月1日(木)15:00~17:00
講師 WAmazing株式会社 代表取締役社長CEO 加藤 史子
ゲスト 日本政策金融公庫 国民生活事業 東京創業支援センター 上席所長代理
坪田 忠幸
進行 株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長、株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長
佐々木 かをり

とことん学び、言葉を探し、メインメッセージを決める。
共感を呼ぶプレゼンテーションの極意

第3回目となった「TOKYO女性経営者塾 by N E W」。今回の講師は、2016年にWAmazing(ワメイジング)株式会社を創業した加藤史子さんです。スタートアップ企業のプレゼンの場であるピッチで何度も優勝し、資金調達に成功した実績。そこにはどんな視点があるのかを教えていただきます。

資金調達は手段。まずは、ビジョンを高く掲げること

冒頭で、「本テーマ『出資したくなるビジネスプレゼンテーション』の全否定から入らせてください」と、加藤さん。出資やプレゼンは、あくまでも「手段」。まずは「ビジョンを高く掲げること」の重要性を語ります。

訪日外国人向けの観光プラットフォームを提供するWAmazingの場合、日本の隅々までの魅力を旅行者へ発信することにより、京都など一部人気地域のオーバーツーリズムを解消し、地方創生に結び付け、外国人と日本人が共生する社会を実現するというビジョンを掲げています。

「夢を共有するからこそ、そこに資金や人材が集まります。人材の力も資金の力も、ビジョン実現のための手段に過ぎない。そこが、ビジョンを大切にすべきと私が思う理由です」

ビジョンを夢で終わらせずに実行するためには、ロジックが欠かせません。WAmazingは、訪日外国人向けに空港で無料SIMを提供。一方で観光事業者と直接契約し、アプリで情報発信することで、旅行者とのマッチングを行っています。旅行者が最も困っている日本旅行中における通信環境の不足と、個人客にアプローチしにくい事業者側という双方の課題に応え、成長していく戦略です。

本で学ぶ、話を聞く。言葉を探し、徹底した事前調査も

プレゼンテーションに臨むにあたって加藤さんが勧めるのは、まず資金調達について学ぶこと。『起業のファイナンス』磯崎哲也(日本実業出版社)など、おすすめの書籍が例に挙げられました。さらに「生の情報も必要」として、「カンファレンスに行き、メモを取る。先輩起業家の話をヒアリング」など、積極的な学びの姿勢が伝授されます。

続いてプレゼンテーションについても、『プレゼンテーションzen』Garr Reynolds(ピアソン桐原)などの書籍をピックアップ。そこで学んだことは「ごちゃごちゃ書かない」「練習する」など。特に大事なことは、相手によってメインメッセージを変えることと言います。

「純粋なベンチャーキャピタリストに対しては『スケーラビリティがありそう、投資リターンがありそう』、コーポレートベンチャーキャピタルに対しては、『このベンチャーと組んだら本業とのシナジーで、あんなこともこんなこともできそう』というイマジネーションをかき立てる、そういうプレゼンを行います」

そのためには、「言葉」を探すことも大切。東急が開催したピッチでは、「空の沿線住民」という印象に残るワードを用いて、WAmazingとの共創事業の可能性をアピールしています。
さらに、事前調査の徹底。スタートアップの登竜門といわれるピッチコンテストの1つB Dash Campの「PITCH ARENA」の場合、プレゼンはたった5分ですが、その後の質疑応答が10分ほど。審査員からの鋭い質問にどう応対するのかがポイントになるため、その状況を踏まえ、想定問答集を50問以上つくり、直前まで練習を重ねたと言います。

借り入れのためだけでない「創業計画書」の作成

続いて、本日のゲストである日本政策金融公庫 東京創業支援センターの坪田忠幸さんから、貸し手側はどんな視点で融資を行うかお話いただきました。

日本政策金融公庫は女性の創業を積極的に支援しています。加藤さんが「まずはビジョン」と伝えたように、坪田さんも「創業計画書(ビジネスプラン)」の意義について、「まずは自分自身のため、頭のなかを見える化するために作成を」と強調しています。

創業計画書と合わせ、困難を乗り越える熱意があるか、必要なスキルや信用があるか、ビジネスが成立するニーズがあるかなど、評価のポイントもお話しいただき、また、収支計画の検証に役立つ経営指標など公庫のサイトで公開されている情報も紹介してくださいました。

融資側にとっては「有事への対応」も評価のひとつ

後半は佐々木かをりさんが進行を務め、参加者とともにディスカッション。佐々木さんが「インバウンドがなくなって厳しいこの状況下で、どのように資金調達に臨んでいますか?」と加藤さんに問いかけると、「こういうときは、有事への対応を見られます」と振り返ります。

「WAmazingでは4月にはオフィスの全面退去を決断、外国籍従業員の雇用を守るために翻訳サービスを開始しました。これだけ短期間に方向性を変えられるということを、実行力でまず見せる。そして、長期的にはインバウンド需要は回復していくという道筋を描く。その2つが決め手になると思います」

参加者からは、融資を受けるうえでのリスク管理や今後のグローバル経済の見通しなどの質問があり、議論が深められました。「起業への不安を乗り越えるには?」という質問には「結局、最後は自分。誰かに背中を押してもらおうと思わないほうがいい」と加藤さん。佐々木さんも「会社の規模に関係なく、山や谷がある。始めてから肝が据わることもあると思いますが、やはり覚悟は必要」とうなずきます。

さまざまな角度から、プレゼンテーションのカギを探った2時間。最後は「自分がつくりたい世界、提供したい価値に対してどういう手段をとるのが一番いいかということを考える。周りの知恵も借りながら頑張れば、かならず道は開けます」という加藤さんの力強い言葉で締めくくられました。

加藤 史子
WAmazing株式会社 代表取締役社長CEO

慶應大学環境情報学部SFC卒業後、リクルートにてインターネットでの新規事業立ち上げに携わった後、観光産業と地域活性のR&D部門じゃらんリサーチセンターに異動。主席研究員として調査研究・事業開発に携わる。
2016年7月、訪日外国人旅行者による消費を地方にもいきわたらせ、地域の活性化に資するプラットフォ-ムを立ち上げるべくWAmazing株式会社を創業。

佐々木 かをり
株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長

大学卒業後に通訳や翻訳を提供するコンサルティング会社ユニカルインターナショナルを、2000年に「ダイバーシティ視点でイノベーションを起こす」をミッションにイー・ウーマンを起業。日本初のダイバーシティを数値化する「ダイバーシティインデックス」を発案するなど、ダイバーシティをテーマに国内外で数多くの講演をしている。内閣府規制改革会議を始め、経済産業省、総務省、厚生労働省、法務省、文部科学省など政府各省の審議会等で委員をつとめている。2018年には世界銀行主催の女性起業家を応援する組織We-Fiの日本代表チャンピオンに任命、さらに世界の2000名の女性経営者が所属する世界女性経営者組織(WPO)の日本支部代表に就任するなど、女性起業家・経営者をリーディングしている。

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