レポート

TOKYO女性経営者塾 by N E W
第5回目講座 業務提携に必要な法律知識

日時 2020年2月19日(水)13:00 – 15:00
講師 金野志保はばたき法律事務所 弁護士
金野 志保
進行 株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長、株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長
佐々木 かをり

多様性の時代に競争力を高める業務提携。
信頼できる弁護士をパートナーに、機密情報を守ることが第一歩

経営者に必要な知識やスキルを学ぶ全5回の講座「TOKYO女性経営者塾 by N E W」。最終回のテーマは、「業務提携に必要な法律知識」です。双方の強みを生かしてビジネス拡大を目指す業務提携。経営における重要な局面のポイントを、上場企業の社外取締役・社外監査役なども務める弁護士の金野志保さんが徹底解説します。

互いの長所を生かし、多様性を高めてメリットを得る

話題は、「そもそも、業務提携とは?」という基本からスタート。近いイメージのM&Aや資本提携との違いは何でしょうか。 「M&Aは、がっつりとひとつに合併する、あるいは他社を丸ごと買収するもの。資本提携は他社が持つ知見・技術が欲しい場合に、双方あるいは片方が出資してビジネスを行います。業務提携はもう少しゆるいつながりで、お互いの長所を生かしてビジネス上のメリットを得て、競争力を高めるための1つの方策です」

では、具体的にはどんなときに業務提携をしたら良いのでしょうか。 「ノウハウやアイデアがあるけれども生産ラインを持たないときは『生産提携』。 他社の販売チャネルを利用したいときは『販売提携』。また、他社の技術と自社の技術を組み合わせて新しい技術を生み出したいというときには『技術提携』や『共同開発』という形で進めていきます」

法律上の明確な定義はないため、契約書は必須!

続いて、「今日、一番言いたいことはこれです」と金野さんが強調するのが契約書の重要性。実は、「業務提携」は法律上の用語ではないとのこと。そのために、民法その他の法律によって規律される部分は最小限の部分で、契約書に書かれた内容が業務提携の当事者の約束事のほぼ全て、ということになります。

当事者の約束事が口約束だけだったり、「決めたことを紙にすればいいんでしょう?」と法律家に頼まないまま簡単な書面を作ると、後で『この費用負担はそちらじゃなかったの?』とか『ここでできた知的財産ってどっちのもの?』など、トラブルが生じやすく、仲がよかったはずの他方当事者と紛争になってしまう。そういったケースをたくさん見てきました」

契約当事者として最低限予め決めておかねばならない必要事項を入れ、自社に有利または少なくとも有利不利がイーブンな契約書を作成するために、弁護士に相談をしてほしいと金野さんは語ります。とはいえ費用負担も気になるところですが、「相手が大企業なら、まずは先方から契約書案を出してもらうという方法も考えられます」とのこと。「先方から出してもらった契約書はもちろん先方に有利な条項が入っていることが通常です。ですので先方から出してもらった契約書を持って弁護士に相談し、自分に不利な条件を削る、あるいは変更していくための契約書レビューを弁護士に依頼すると、ゼロから弁護士に契約書作成を依頼するよりもフィーが比較的安くすみます」とのことです。

業務提携の流れ。まずは「機密保持契約」を締結する。

実際に業務提携をする場合は何から始めるのでしょうか。金野さんが「業務提携そのものの契約書を作成することの重要性に次いで2番目に今日言いたいこと」と強調するのは「最初に機密保持契約を締結する」という点です。

「業務提携する際には、自社が持つアイデアやノウハウなどの情報を開示する必要が出てくることが多いです。そこで機密保持契約を締結していないとどうなるか。自分が開示した情報を使って、相手方企業が似たようなビジネスを他社と始めてしまったり、相手会社が先に特許申請してしまったりといったこともあり得ます。もしも最終的な業務提携契約の締結まで至らないとしても、秘密保持契約をまず締結したうえで情報を開示するということが重要です」

それから基本合意、業務提携契約の締結というプロセスが一般的ですが、中小企業の場合は基本合意を飛ばして直に業務提携契約へ進むというケースも多いそうです。

弁護士は「紹介」で選ぶのが基本。デイリーに相談するなら顧問契約を

業務提携において欠かせないパートナーである弁護士は、どのように選べば良いのでしょうか。 「一般論で弁護士の探し方を、と問われた場合は、会社員であれば「上司に聞く」というのが鉄則です。皆さんはもう起業している方が多いでしょうから、その場合は目上の方で日ごろから相談しやすい方ということになるでしょうか。年齢が高ければ法的な手続きを経験したことのある方が多いためです。前職で上司だった人と関係が悪くなければそういった方などにアドバイスを求めることもできると思います。基本は、紹介で選びましょう。ネットで検索して広告だけで判断するのはお勧めできません」

また、月々一定の費用を払う「顧問契約」をすることにより、面談だけでなく電話やメールなどで、いつでも気軽に相談することも可能ですし、先に述べた契約書レビューなどは顧問料の範囲ででき、extraのフィーがかからないことが通常とのことです。

業務内容を理解してもらい、弁護士との信頼を築く

後半は佐々木かをりさんが進行を務め、参加者からの質問も受けながら議論を掘り下げました。

「顧問契約において注意したいこと」について、金野さんは「ベンチャー支援を謳っている法律事務所が安い弁護士費用とは限らない」ということを挙げます。広告などに惑わされず、しっかり見極める必要がありますが、いずれにしてもやはり「紹介」を基本と考えた方がよさそうです。

また、新しいビジネスを始めようとしたときに、その想いを弁護士に理解してもらわないと、契約に漏れが生じたり、一歩踏み出してもらえないなどの影響が出るとのこと。業務内容に関心を持っている方にお願いをする、もしくは関心を持ってもらうようにする、そのために業務内容についてのプレゼンの機会を設けてもらうことも重要となります。

業務提携で「1+1が3にも、4にもなる」

経済競争がグローバルになった現代。「地球の裏側の国や人にリーチできる製品やサービスを、自社がどのように提供できるのか?ということを常に考えていかないといけない」と金野さんは語ります。多様な視点を得るために、自分にはない他社の知見などを得て競争力を高める、1+1を3、さらに4としていくための手段が、業務提携。その際にまず必要なのが契約書であり、サポートをしてくれる弁護士を強い味方にしながら進めていくことで、ビジネスの可能性は大きく飛躍できそうです。

金野 志保
金野志保はばたき法律事務所 弁護士

1991年4月第一東京弁護士会登録。企業法務、知財事件、IT関係から離婚・相続・子供の問題や刑事事件まで幅広い分野を手掛ける。弁護士業務以外に、ヤフー株式会社社外監査役等を始め企業の社外役員を多く務め、現在はマネックスグループ株式会社社外取締役、アルフレッサホールディングス株式会社社外取締役、株式会社新生銀行社外監査役を務める。プロボノ活動としては内閣府男女共同参画連携会議委員、日弁連男女共同参画推進本部委員、日弁連社外取締役ガイドラインPT委員等を務め、ダイバーシティとコーポレート・ガバナンスに詳しい。公私の団体の各種研修講師を務め、新聞・テレビ等のメディアへの登場も多い。

佐々木 かをり
株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長

大学卒業後に通訳や翻訳を提供するコンサルティング会社ユニカルインターナショナルを、2000年に「ダイバーシティ視点でイノベーションを起こす」をミッションにイー・ウーマンを起業。日本初のダイバーシティを数値化する「ダイバーシティインデックス」を発案するなど、ダイバーシティをテーマに国内外で数多くの講演をしている。内閣府規制改革会議を始め、経済産業省、総務省、厚生労働省、法務省、文部科学省など政府各省の審議会等で委員をつとめている。2018年には世界銀行主催の女性起業家を応援する組織We-Fiの日本代表チャンピオンに任命、さらに世界の2000名の女性経営者が所属する世界女性経営者組織(WPO)の日本支部代表に就任するなど、女性起業家・経営者をリーディングしている。

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