レポート

TOKYO女性経営者塾 by N E W
第4回目講座 私の事業計画書:会社の発展へ

日時 2019年12月10日(火)15:00 – 17:00
講師 石坂産業株式会社 代表取締役
石坂 典子
進行 株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長、株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長
佐々木 かをり

1枚の事業計画書から40億の融資へ 一番大切なのは、会社の価値を理解してもらうこと

連続講座「TOKYO女性経営者塾 by N E W」、第4回のテーマは「私の事業計画書:会社の発展へ」。産業廃棄物処理業の既存のイメージを覆す事業展開を成し遂げ、世界中から見学者が訪れる注目企業に変貌させた、石坂産業株式会社代表取締役 石坂典子さんに、事業計画、戦略を立てることの必要性、計画から実践へのストーリーを伺いました。

創業者の思いを可視化したい!と、逆風のなか社長に

学生時代の夢だった「ネイルサロン」開業資金を貯めるため、父親が経営する石坂産業に入社して10年。そろそろ退職と考えていた矢先に、産廃業のダイオキシン問題が発生。大バッシングを受ける中、初めて父親から「廃棄物を100%再生するような事業をやりたい」という創業者の夢を聞いた石坂さんは、「社長をやらせてほしい」と言い、1年後に晴れて社長に就任します。

「創業者である父の思いを可視化したいという気持ち」で事業を継ぎ、社長になった石坂さんが最初にやったことは、それまで屋外で行っていた建築系廃材を中心とした産業廃棄物の処理を建物の中で行うべく、処理施設を建設することでした。でもそれには何十億もの資金が必要です。しかも、近隣地域で「石坂産業は出ていけ!」と反対運動が起きている逆風の最中、銀行もそう簡単に融資はしてくれません。

そこで初めて石坂さんは、事業計画書を作ることになります。「実は、この一回しか自分で作ったことないんです、事業計画書(笑)」。

初めての事業計画書につけた1枚の手紙

「何故建てたいのか、どこに建てたいのか、投資をどう回収していくのか……。そういうことを箇条書きにして1枚で仕上げ、あとは数字の根拠として見積書などを出すわけですけど、そこに私は1枚の手紙をつけたんです」と石坂さん。その手紙には、「これは企業を成長させるための投資ではなくて、地域の環境に配慮するための投資である。なぜこの会社を残したいのかなど、私たちの思いをひたすら綴りました」。

受け取ってもらうだけでも大変だった手紙。でも申請後しばらくして、「社長の手紙を見て感動した、なんとか応援したい」と「奇跡のような」連絡があり、1年後には行政許可がおりるまでに漕ぎつけ、40億の融資を受けることができたといいます。

工場見学も事業説明会も、会社の価値を理解してもらうため

融資を受けて、雨水を貯めてのタイヤ洗浄、電動重機に変えて排ガスを出さない、緑化の壁、太陽光利用など環境に配慮した設備への投資を行い、また、「一番やりたかったのは、経営を見せること」と、工場見学の仕組みも完成。

リサイクル技術も大きく進化し、現在では、「減量化リサイクル化率98%」を達成!
「世界に誇れる技術になっています」という石坂さんの言葉通り、昨年は4万人が工場見学に来社、世界30カ国の政府関係者が視察に。
さらに、不法投棄をなくすゴミゼロ運動、会社周辺の里山保全管理、生物多様性の森づくり、子どもたちの環境教育、オーガニック野菜づくりなどにも事業の幅を広げ、石坂産業というブランドを確立。

「廃棄物は、いずれは全部再生する時代になる。だからこそ技術開発が必要で、そこに投資する私達の仕事の意味と価値はものすごく高い」。それをしっかり金融機関や関係者にわかってもらうため、毎年定期的に「事業説明会」を開催しているという石坂さん。「経営者として、投資したり挑戦したりするのが怖くなるときがあっても、社会のために今足りないことは何なのかよく考えてみれば、やるべきことが見えてくると思います」。

金融機関や関係者を巻き込む、コミュニケーションスタイル

石坂さんの熱いスピーチに続いて、日本政策金融公庫 国民生活事業 東京創業支援センターの坪田さんに、事業計画書を作成する目的、および、金融機関からみた事業計画とは何かをご解説いただきました。

そして後半は、株式会社イー・ウーマン代表取締役社長、株式会社ユニカルインターナショナル代表取締役社長の佐々木かをりさんの進行によるトークタイム。会場からの質問も受けて、活発な議論となります。

まず、佐々木さんから一言。「いま世の中がESG投資の時代になり、決算書だけでは事業が評価できなくなっています。事業計画書からも脱する時期が来たんだなあと感じています」。

続いて先ほどの石坂さんのお話を受けて、「銀行の方に向けてされている事業説明会」について尋ねると、石坂さんはこう答えます。「1年に1回決算が終わったあとに、すべての金融機関に来ていただいて、今期の数字の結果、社会や業界の動向、マイナスなどの説明もさせていただき、今後の計画や施策を話します」。
また、「最近はサードオピニオンも付けて」信頼性を高めるなどの工夫も。さらに、「講演会」というスタイルで、リース会社なども巻き込んだコミュニケーションも20年程続けているといいます。

その後、会場からは、「有利に思えないなかでブレイクスルーするには何が必要か」、「経営役員会議はどういう仕組か」、「事業計画書を書く人が社員の中にいるのか」、ブランディングや借入のことについてなど、プラクティカルな質問が矢継ぎ早に。

石坂さんの貴重な体験と知見、ひらめき、情熱とエネルギーが惜しみなくシェアされ、女性経営者への多くのヒントが盛り込まれたセミナーとなりました。

石坂 典子
石坂産業株式会社 代表取締役

1972年東京都生まれ。高校卒業後、米国の大学に短期留学。1992年父親が創業した石坂産業株式会社に入社。埼玉県所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、「私が会社を変える」と父親に直談判し、2002年社長就任。「社員が自分の子供も働かせたい」と言える企業創りを目指し、女性の感性と斬新な知性で産業廃棄物処理業界を変革する経営に取組み“見せる・五感・ISO経営”に挑戦している。2016年日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016・情熱経営者賞」受賞。2018年日刊工業新聞社優秀経営者顕彰「第35回記念特別賞」「優秀経営者賞」受賞。平成30年度財界「経営者賞」受賞。エイボン女性年度賞2018「ソーシャル・イノベーション賞」受賞。
平成29年度環境教育推進専門家会議(環境省・文部科学省)委員/一般社団法人埼玉県環境産業振興協会理事を務める。

佐々木 かをり
株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長

大学卒業後に通訳や翻訳を提供するコンサルティング会社ユニカルインターナショナルを、2000年に「ダイバーシティ視点でイノベーションを起こす」をミッションにイー・ウーマンを起業。日本初のダイバーシティを数値化する「ダイバーシティインデックス」を発案するなど、ダイバーシティをテーマに国内外で数多くの講演をしている。内閣府規制改革会議を始め、経済産業省、総務省、厚生労働省、法務省、文部科学省など政府各省の審議会等で委員をつとめている。2018年には世界銀行主催の女性起業家を応援する組織We-Fiの日本代表チャンピオンに任命、さらに世界の2000名の女性経営者が所属する世界女性経営者組織(WPO)の日本支部代表に就任するなど、女性起業家・経営者をリーディングしている。

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