レポート

TOKYO女性経営者塾 by N E W
第2回目講座 成長期における人事戦略・人事制度の作り方

日時 2019年10月15日(火)15:00 – 17:00
講師 石黒 不二代(ネットイヤーグループ株式会社 代表取締役社長 CEO)
進行 佐々木 かをり(株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長、株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長)

ビジョンを共有できる人財とともに
ベクトルを伸ばしていく

女性経営者に向けた「TOKYO女性経営者塾 by N E W」。第2回はネットイヤーグループ(株)代表取締役社長 CEO石黒不二代さんを講師にお招きし、成長期における組織戦略の立て方、実践の仕方をさまざまな体験談とともにうかがいます。進行は、(株)イー・ウーマンおよび(株)ユニカルインターナショナル代表取締役社長、佐々木かをりさんです。

アメリカで起業、成長過程で見えてきた局面

セミナーの前半は石黒不二代さんの講演です。大手企業を中心に800社以上との取引を行い、25,000件を超えるデジタルサービス導入の支援を行っているネットイヤーグループ。ただし、「言われたことをそのまま作る開発専業」ではない、と石黒さんは強調します。「クライアントのビジネスを知り、もっと成長するために必要な施策、ベターなユーザーエクスペリエンス(顧客体験)を提案する会社です」

そして、現在に至るまでのライフラインを辿ります。大学卒業時は女性の求人がまったくない時代だったのでアルバイトからスタート、1年後にブラザー工業に入社して海外営業を担当。結婚後に転職し、MBAホルダー以外は採用しないという外資系企業を経験した後、2歳のお子さんを連れてスタンフォード大学へ留学、アメリカで起業します。「小さい会社ですがうまくいき、ネットイヤーグループに出会いました。そして、当時のCEOとともにMBO(Management Buyout *注)を行って日本に会社を移しました」

アメリカの手法を持ち込み、注目を集めたネットイヤーグループは優秀な人材の獲得に成功します。「証券会社ができるんじゃない?と言われるほど、ファイナンスの人も充実していました。ユーザーエクスペリエンスデザインを実現するために、日本では名だたる専門家も入り、最初からとてもいいチームが作れました」

やがて会社の規模が大きくなってくると、方向性の違いが生じてきます。戦略を担う人が2人いたこともあり、「船頭が多すぎる」といわれる状態に。「結局、思いを一緒にしなければ同じベクトルにならないし、ベクトルも長くならない。上場前・上場後に2度大きく経営陣が入れ替わるなどの局面を乗り越え、2008年に上場。2019年の3月にはさらなる成長を目指してNTTデータからTOB(Take Over Bid *注)を受けています。

最初に採用する人財と、企業ブランディング

佐々木かをりさんが進行する後半のトークショーでは、さらに具体的にお話を伺い、会場からの質問も受けながら議論を深めていきます。

講演でも語られたように、起業して最初のチーム作りに成功している石黒さん。そのスタートを切るために「最初に誰を採用するかが非常に大事」といいます。「著名な人でなくてもいいけれど、例えばIT業界では『このエンジニアと働きたい』と言われている人たちがいます。そういった人財の採用から始められると素晴らしいですね」

そのためにも、自社のブランディングに成功していることも大切と語ります。「ネットイヤーグループのブランドパーソナリティーを社員に尋ねると、『中性的』『ちょっとかっこいい』といった言葉があがってきます。それが自分に合っている、と思う人が集まってくるということです。職種が違っていても、その部分は合意ができている。それが基本なんだと思います」

「ダイバーシティ視点でイノベーションを起こす」をミッションに、2000年にイー・ウーマンを設立した佐々木かをりさんも「自分と合う人だけを採用していては会社が成長しないと考え、違和感がある人も採用していたことがあります。でも、やはりうまくいきませんでしたね」とうなずきます。

成長過程で向き合うことになる、課題がある社員への対応

企業が成長していく過程では、人事の課題も変わっていきます。

「長年採用をしていると、『お互いに間違えてしまいましたね』という人はある程度の確率でいらっしゃいます」と石黒さん。「そういう人を雇用していると、周りからも不満が出てきます。この状況を改善するために、ネットイヤーグループでは半期に一回目標を立て、それにミートしたかというフィードバックや、360度評価を何回か行います。そこでマッチしないために浮かびあがってくる人には、数字だけでなく態度なども含めたパフォーマンスについて上司から指摘することはあります」

その結果、チームの一員として成長を遂げる人もいれば、やめていく人もいる。そういったなかで、同じ方向のベクトルが強固に、そして長くなっていくと言えそうです。

外国人の採用はエージェントを活用

会場からの質問タイムに移ると、「履歴書などを送付してもらった際、記載内容をどう判断しているか」という会場からの問いに対しては、石黒さんは「履歴書は基本的には信じて見ています。ポジションの高い方はリファレンスチェックを取ります」と回答。

また、ダイバーシティ社会を目指すうえで近年増えている外国人の採用についても、子会社ではすでに進めており、将来的にはさらに広げる必要があるとのこと。「今は、信用のおける外国人のエージェントがいます。日本ももっと変わって、外国人の労働市場を大きくしていかなければ」と提言します。

職種や本人の希望により、複数の人事制度で対応

現在、ネットイヤーグループの社員は約300名。「会社の規模としてはまだ小さいが、多様な職種に対応する人事制度を進めている」といいます。

「ネットイヤーグループには、いわゆる戦略コンサルタントやエンジニア、デザイナーなどのクリエイターもいます。それぞれ全く違うことを考え、全く違うことで動く。なので、例えばクリエイターとエンジニアの評価は、それぞれ違う目標を設定して振り返りを行うなど、複数の人事制度をつくるようにしています。 また、キャリアパスについても、多様な人材を踏まえて用意しています。例えば管理職を望まずにずっとプログラミングをしていたいという人もいるので、管理職になれるコースと今のままの職種というコースを作り、給与の比較も見せて選択していくようにしています」

最後に佐々木さんが「人事制度や評価は、大企業と中小企業では違う。最終的には、ビジョン共有、そこでつながれるかどうか、自分の感覚を信じ、腹決めをしていくということだと思います」と会場に呼びかけます。この後のネットワーキングとともに、石黒さんのビッグスケールな人生を振り返りながら人事戦略を学ぶひとときとなりました。

石黒 不二代
ネットイヤーグループ株式会社
代表取締役社長 CEO

1994 年アメリカ・シリコンバレーでテクノロジーに特化したコンサルティング会社Alphametrics Inc.を創業、社長に就任。1999年Netyear Group,Inc. 取締役、ネットイヤーグループ株式会社取締役を経て、2000年5月より現職。2008年には東証マザーズに上場させた。内閣官房 「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部」 本部員、経済産業省「産業構造審議会」の委員などの公職も務める。著書や寄稿多数。フジTVの「新報道2001」やNHKの「Bizスポ」などでコメンテーターを務める。スタンフォード大学経営学修士(MBA)、名古屋大学経済学部卒。

佐々木 かをり
株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長

大学卒業後に通訳や翻訳を提供するコンサルティング会社ユニカルインターナショナルを、2000年に「ダイバーシティ視点でイノベーションを起こす」をミッションにイー・ウーマンを起業。日本初のダイバーシティを数値化する「ダイバーシティインデックス」を発案するなど、ダイバーシティをテーマに国内外で数多くの講演をしている。内閣府規制改革会議を始め、経済産業省、総務省、厚生労働省、法務省、文部科学省など政府各省の審議会等で委員をつとめている。2018年には世界銀行主催の女性起業家を応援する組織We-Fiの日本代表チャンピオンに任命、さらに世界の2000名の女性経営者が所属する世界女性経営者組織(WPO)の日本支部代表に就任するなど、女性起業家・経営者をリーディングしている。

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