レポート

TOKYO女性経営者塾 by N E W
第1回目講座 成長の基礎。補助金や融資など金融機関との付き合い方

日時 2019年9月25日(水)15:30 - 17:30
講師 諏訪 貴子(ダイヤ精機株式会社 代表取締役)
進行 佐々木 かをり(株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長、株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長)

交渉と情報交換、融資の有効活用で
信用を築き、成長へ結びつける。

全5回の連続講座で、経営者に必要な知識やスキルを学ぶ「TOKYO女性経営者塾 by N E W」。第1回は二代目社長として企業規模を拡大させてきたダイヤ精機(株)代表取締役の諏訪貴子さんを講師にお招きし、金融機関との付き合い方について伺います。進行は(株)イー・ウーマンおよび(株)ユニカルインターナショナルの代表取締役社長、佐々木かをりさんです。

銀行はパートナー。パワーバランスは対等に

セミナーは諏訪さんの講演からスタート。専業主婦として子育ての日々を送っていた2004年、ダイヤ精機(株)創業者の父親が急逝し、32歳という若さで二代目に。付き合いのあった銀行へ社長就任の挨拶に行くと、古い体質の支店長の答えは「お前、頑張らなきゃダメだぞ」。この言葉が諏訪さんに火をつけることになります。

「チャンス!と思いました。『お前』なんて言い方をするような銀行と、私は付き合えないと言いました」
ダイヤ精機の社員だったこともある諏訪さんは、父親と銀行との交渉の場に同席することもありました。そこで学んだことは「銀行はパートナー。パワーバランスは対等でなければいけない」。

父から受け継いだ気迫が支店長の心を動かし、やがて経営者として認められていくことになります。事業継承のやり取りでも、その力をいかんなく発揮。
「二代目というのは、株が父親の財産の場合が非常に高い。それを引き継ぐまではオーナーになれないので、連帯保証は少し待ってくれという話をしました。すると預金があるにも関わらず、不良債権だと。これは理不尽だということは伝えなければならないと、女性弁護士と組み、一年以上かけて話を進めていきました」

銀行では女性がまだ軽んじられる傾向にあると、諏訪さんは語ります。
「なので、気迫で負けてはいけない。正論は絶対に言った方がいい。悪い習慣というのはただの習慣であって、法律ではありません」

交渉術の大事なポイントは、会社の強みを伝えることと、複数の銀行と付き合うこと。
「この会社はいらないと思えば銀行はすぐ切ってしまうので、会社の魅力を伝えつつ交渉していかないといけない。そして、1行だけでなくいくつかの銀行と付き合って情報を仕入れる。私の経験からすると、1行は政府系を入れたらいいのかなと。金利などの情報が明確なためです。民間だけだと金利については秘密主義になってしまうので、複数付き合ったほうがいい」

融資を受けるなら「伸びているとき」

後半は、佐々木かをりさんの進行によるトークショーです。会場からの質問も募り、インタラクティブに議論していきます。

ダイヤ精機(株)については融資を受けたことがなかったという諏訪さんですが、2年前に新規事業を立ち上げた際に初めて利用しています。
「やっぱり覚悟の入れ方が違いますね。苦しいときではなく、新しいチャレンジをするときに銀行から借り入れるものだと、今はそう思っています」
佐々木さんも「私も33年前に会社を作ったとき、無借金経営が良いと思っていました。ところが何年か経ったときに、経営者仲間や先輩から『銀行と付き合わないとだめだよ』と。お金を借りて返すことを続けることで、会社が信用されるとアドバイスされたんです。伸びているときが借りどきだと思います」とうなずきます。

会場からは新規事業を立ち上げた人からの質問があり、「まずは補助金を活用。さらに借り入れ。100万円でも借りておくと履歴が残り、その後の利用がしやすくなる」などの具体的なアドバイスも。

金利も交渉次第。常に情報交換を

佐々木さんが「金利って交渉できるって、皆さん知っていましたか?」と会場へ呼びかけると、驚きの声が上がります。諏訪さんも、佐々木さんの助言で銀行へ交渉したところ、翌日に1%下がったとのこと。
「やはり情報交換はとても大事。それからは金利を下げてと、何度も交渉しています」

また、交渉の場では重要な数字を常に覚えておくことも大切とのこと。諏訪さんは「売り上げと外注比率は毎日頭に入れ、いつ銀行がきてもスラスラ言えるようにはしている。原価などを把握していない経営者は銀行に信用してもらえないので」と言います。

女性の活躍で金融機関を変えていく

会場から「借り入れを断られそう。女性だからかも」という相談が上がると、佐々木さんは「貸してくれない理由を明確にしてください、と伝えましょう。『それは女性だから』とは言わずになんらかの理由を言うでしょうから、それをクリアする。銀行はその対応を見ているかもしれない」。諏訪さんも「銀行はこの人に経営者の資質があるだろうか、という分析をしながら来ているので、信頼させる交渉をしていくことです」をうなずきます。

女性経営者への厳しさも残る金融機関ですが、「1990年のアメリカで、10年後には中小企業の半分以上が女性の経営によって運営されると予測が出た瞬間、銀行はそれまでは貸さなかった女性経営者を支援するようになった」と佐々木さん。
「金融機関を活用しないと、彼らも困るはず。私たちが正しいと思うことを言って変えていきましょう」

諏訪さんの手法と軌跡をうかがった貴重なひととき。女性たちからの質問も活発に飛び交った第1回「TOKYO女性経営者塾」が終了しました。

諏訪 貴子
ダイヤ精機株式会社 代表取締役

1971年東京都大田区生まれ。成蹊大学工学部卒業後、ユニシアジェックス(現・日立オートモティブシステムズ)でエンジニアとして働く。32歳(2004年)で父の逝去に伴い大田区の町工場であるダイヤ精機株式会社社長に就任。新しい社風を構築し、育児と経営を両立させる若手女性経営者。日経BP社Woman of year 2013 大賞を受賞。2017年には社長就任からの10年間をまとめた著書「町工場の娘」がNHKドラマ10でドラマ化。自身の経験をもとに事業継承問題に積極的に取り組んでいる。また、ニュースZEROや日曜討論等のメディアに多数出演し、中小企業の現状を伝えている。

佐々木 かをり
株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長

大学卒業後に通訳や翻訳を提供するコンサルティング会社ユニカルインターナショナルを、2000年に「ダイバーシティ視点でイノベーションを起こす」をミッションにイー・ウーマンを起業。日本初のダイバーシティを数値化する「ダイバーシティインデックス」を発案するなど、ダイバーシティをテーマに国内外で数多くの講演をしている。内閣府規制改革会議を始め、経済産業省、総務省、厚生労働省、法務省、文部科学省など政府各省の審議会等で委員をつとめている。2018年には世界銀行主催の女性起業家を応援する組織We-Fiの日本代表チャンピオンに任命、さらに世界の2000名の女性経営者が所属する世界女性経営者組織(WPO)の日本支部代表に就任するなど、女性起業家・経営者をリーディングしている。

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